飛騨地方の方言に興味津々の方に朗報です。SNSや旅行先で「飛騨弁ってかわいい!」という声を耳にしたことはありませんか?でも実は飛騨弁では「かわいい」にちょっと驚きの意味があって、思わず誤解しちゃうかもしれません。この記事では、飛騨弁の「かわいい」が持つ本当の意味を丁寧に解説し、さらに耳にすると思わず心がキュンとするかわいい飛騨弁フレーズを紹介します。人気のドラマや映画で登場する飛騨弁のシーンもチェック!飛騨弁の魅力や正しい使い方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
飛騨弁で「かわいい」はどういう意味?
まず押さえたいのは、飛騨弁の「かわいい」は標準語と違い、「可哀そう(かわいそう)」を意味することです。たとえば、飛騨地方の人が誰かに「かわいいや」と言った時、標準語の「かわいいなあ」とは趣が違い、「かわいそうだなあ」という同情や気の毒がる気持ちが込められています。
具体例を挙げると、高山の昔からの言い回しで「おまえ、かわいい人だなあ」は「あなたが本当に気の毒だよ」という意味になります。驚くかもしれませんが、飛騨の郡上郡や奥飛騨の一部地域ではこうした使い方が古くから受け継がれています。辞書的にも「かわいい(飛騨方言)」は「かわいそうな(気の毒な)」と説明されており、現代の共通語の意味とは全く異なる古い用法です。
飛騨弁独特の「かわいい」の使い方
飛騨弁で「かわいい」を使うときは、その前後の文脈が重要です。共通語の「かわいい」を想像して「○○さんはかわいいですね」と褒め言葉のつもりで使うと、相手は思わず肩をすくめるかもしれません。逆に、飛騨で使う「かわいい」は相手を気遣ったり同情を示す表現になります。たとえば病気から回復した友人を見て、「○○はかわいいなあ」と言えば「よかったね、本当にかわいそうだったから」といった温かい同情の意味になるのです。
標準語との違い
標準語で「かわいい」は「愛らしい・魅力的だ」という意味ですが、飛騨弁では別の意味なので混乱を招きます。飛騨出身の方言研究家によると、これは飛騨弁が古語を保っている証拠で、平安時代〜鎌倉時代の「可愛い(かはゆし)」が「かわいそう」というニュアンスを持っていたことに由来しています。つまり、飛騨弁では語の歴史的な意味が変わらず残っているのです。おそらく飛騨の山間地で古い形が固く伝わった結果、今でも「かわいい」が「かわいそう」になっているわけですね。
飛騨弁「かわいい」の使用例
飛騨弁で「かわいい」を使うときは、主に年配の方や地域に根付いた言い回しで耳にします。例えば高齢の女性が孫の様子を見て「最後まで頑張っただがかわいいなあ」と言うとします。この場合、孫を褒めているのではなく「可哀そうなくらい一生懸命だったね」というねぎらいの意味です。また「〇〇さんはほんにかわいい人だわ」も「ほんとうに気の毒だなあ」という意味になります。このように飛騨弁での「かわいい」は人の労をねぎらう気持ちを表す場面が多いことを覚えておきましょう。
飛騨弁が「かわいい」と言われる理由
飛騨弁がよく「かわいい」と評されるのは、言葉そのものの響きや話し方に独特の優しさがあるからです。飛騨地域の方言は、語尾に「やわ」や「~している」という語尾言い切り形、そしてアクセントが平板でゆったりしています。こうした特徴が全体に穏やかで柔らかい印象を与え、聞く人の心を和ませるのです。
また、飛騨弁の挨拶や語尾には尾張弁・名古屋弁にも近い部分もありつつ、他地域の方言とは異なる音色があるため、一度聞くと忘れられない個性があります。映画やドラマで飛騨弁が耳に入ると「なんだかほっこりする」「かわいい響きだ」と話題になるのはそのためです。飛騨弁の言い回しが全国的に注目される理由には、人々が方言の持つ温かみを感じ取りやすいこともあるでしょう。
音の響きとイントネーション
飛騨弁はアクセントが控えめで平板なことが多く、語尾に文字通り抑揚を抑えた柔らかな音を持ちます。たとえば「~やよ」「~しとるもんで」のように、濁点や長音を多く含む言い回しは、聞く側に心地よく響きます。高山や飛騨市の方言はサ行やタ行が和らいだ発音になることもあり、全体的に語気が穏やかになるのが特徴です。こうした音の柔らかさが「かわいい」と感じさせる要素の一つです。
優しい言い回しの特徴
飛騨弁には、相手を敬ったり気遣ったりする表現が豊富です。「しとるもんで(~しているから)」や「〇〇だわ」「〇〇やなも」など、やわらかい終助詞や丁寧語のようなニュアンスを含む言葉づかいが好印象に映ります。たとえば「やわ」は感嘆や女性らしい語尾として知られ、名古屋弁にも「やよ」や「わ」と似たかわいらしさを与えます。また「~しとるがや」は「~しているから」の意味ですが、ふくよかな響きで素朴で温かい感じが生まれます。
歴史背景が生む魅力
飛騨地方はかつて交通の要衝である箱根や高山街道の山道沿いに位置し、外部の文化を独自に吸収しながら方言を形成してきました。また、豪雪地帯ゆえ人々が家族や近隣との交流を大切にするコミュニティ性が強く、年配者を中心に古い言葉が残りやすい環境です。そのため、古語由来の表現が活きていたり、方言そのものが他にはない味わいを持ちます。古風な響きが混じる飛騨弁は、標準語になじんだ人にとっては珍しく、郷愁や優しさを感じる要因になっているのでしょう。
かわいい!人気の飛騨弁フレーズ紹介
飛騨弁には、聞くだけで気持ちがふんわりするようなフレーズがいくつもあります。ここでは地元で愛される「かわいい飛騨弁フレーズ」を3つピックアップしてご紹介します。旅行先や会話の中で使えば、思わず相手を笑顔にさせるかも!?
しとるもんで
意味は「~しているから」という、いわゆる理由をあらわす語尾です。たとえば「宿題しとるもんで、そっとしといてや~」なら「宿題しているから、構わないでね」という意味になります。飛騨弁では母音がこもるように発音されることが多く、口をあまり大きく開けずに「しとるもんで」と言うと、包み込むような優しい響きになります。日常会話の中で理由やお願いを伝える時に便利。相手に伝えるとき思わず笑顔になる、和やかな表現です。
まちょに
「まともに」「ちゃんと」の意味を持つ言葉です。たとえば「まちょに仕事しとらんと、怒られるで!」は「ちゃんと仕事しておかないと怒られるよ」という意味になります。標準語の「まともに」を「まちょに」と言う飛騨弁独特の響きには、思わずハッとする可愛さがあります。普段あまり馴染みのない言葉ですが、そう言われると親しい間柄では愛嬌(あいきょう)すら感じられ、恋愛シーンなどで使うとキュンとする効果も!?
やお・やおな
「そうだよね」「そのとおり」と同意する言葉で、どちらも女性らしい語調があります。「やお」は単独で「そうだよね」の意味。「やおな」は語尾に「な」を付けて「そうだよねー」くらいのニュアンスになります。例えば友達の意見に「わかる!やおな!」と言えば、「わかるよ、それと同じこと思ったわ!」という積極的な共感を表します。聞いていると優しい同調を感じ取ることができる、女子心に響くフレーズです。
飛騨弁が登場したドラマ・アニメで話題に
近年、飛騨を舞台や背景にしたドラマや映画が増えたことで、飛騨弁が全国的に注目を浴びています。若者にも有名な映画『君の名は。』やNHKの朝ドラ『半分、青い。』などには飛騨弁が登場し、その優しい響きや独特の語尾が「かわいい」と話題になりました。方言を知らない視聴者でも耳に残りやすい表現が多く、飛騨弁の魅力を伝えるきっかけになっています。
『君の名は。』と飛騨弁
新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』のヒロインは岐阜・飛騨地方の農村に住む女子高校生。劇中で彼女や家族が話す言葉は、実際の飛騨弁をモデルにしています。たとえば「だからケータイ見じょ(見るな)や!」、「宿題なんかしとらんのや」「そうやよ」など、独特の語尾「~や」「~じょ」を聞くことができます。映画ではアクセントは平板でイントネーションが抑えめに演出され、もともと優しい印象の飛騨弁がさらに柔らかく感じられます。「あの女の子の方言かわいい!」と、全国で方言好きが増えた作品です。
NHK朝ドラ『半分、青い。』
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』は岐阜県が舞台の一つで、登場人物が飛騨や美濃の方言を話します。岐阜弁の中でも地域差がありますが、主人公の親友らは飛騨山間部のアクセントに近い話し方を披露。たとえば「ほんにそだわ」「~しとるわ」などのフレーズが使われました。朝ドラ効果で視聴者にも親しみやすい「や~わ」「~よね~」という語尾が注目され、カタカナで書かれた方言にも反響がありました。テレビで飛騨弁を聞いた多くの人が「かわいい!」と感じ、岐阜県への関心も高まりました。
その他の作品での使用例
そのほかにも、近年放送された宮藤官九郎脚本のドラマ『最愛』や静岡発のドラマ『高校プレイボール』などで、飛騨弁の方言が使われたシーンが登場しています。地域色を出すためストーリーに採り入れられることが多く、ドラマ制作側も地味な印象の方言ではなく、かわいらしい響きを持つ飛騨弁を選択しています。これらの作品では「まちょに」「しとったもんで」といったリアルな方言が使われ、視聴者の心をつかんでいます。
まとめ
飛騨地方の方言、飛騨弁は独特の響きとニュアンスで「かわいい」と評される魅力的な言葉です。しかし冒頭で紹介したように、飛騨弁の「かわいい」には「かわいそう」の意味があることを覚えておきましょう。地元民と話す際は意味を取り違えないよう注意しつつ、例に挙げたフレーズを使えば会話が盛り上がるはずです。旅行や日常で飛騨弁を耳にしたら、その音の響きや言い回しを楽しんでみてください。方言を理解することで現地の人との距離もグッと縮まりますし、何より飛騨弁の持つ優しい魅力を体感できるはずです。
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