郡上八幡城は岐阜県郡上市にある山城で、戦国時代に築かれた歴史ある天守が魅力です。城は戦乱で失われた後、昭和に復元され、日本最古の木造再建城として知られています。城山の山頂に位置し、天守閣からは眼下に郡上の美しい町並みや山並みを望めます。
近年、耐震改修が終わり、新たに生まれ変わった天守閣が一般公開されています。この記事では郡上八幡城の歴史的背景や城の特徴、周辺の観光スポットを詳しく紹介します。
目次
郡上八幡城の歴史と見どころ
郡上八幡城は古くから郡上市を象徴する城で、戦国時代から江戸時代、そして現代に至るまで歴史と観光の要素を併せ持っています。ここではまず城の歴史的概要と郡上八幡城ならではの呼び名や文化財指定について整理します。
歴史概要
郡上八幡城は戦国時代末期に遠藤氏が八幡山に築城したのが起源と伝えられます。以降、豊臣秀吉の時代から江戸時代初期にかけて城主が何度か変遷しました。江戸時代には郡上藩の藩庁として青山氏や城代旗本の領有が続き、19世紀初頭には井上・金森家が城主となりました。しかし宝暦年間の郡上一揆の後に金森氏が改易となり、幕末には尾張藩の飛び地となりました。
別名と文化財指定
郡上八幡城は「積翠城(せきすいじょう)」という別名でも親しまれます。この名は青々とした山々に抱かれた美しい景観に由来しています。再建された現天守は1933年の建立ですが、昭和62年(1987年)には旧八幡城跡として岐阜県の史跡に指定され、郡上市の重要文化財にも登録されました。これにより城の保存・修復が進められ、現在も当時の姿で公開されています。
郡上八幡城の歴史: 築城から再建まで
郡上八幡城は築城以来、長い歴史の中で何度も姿を変えてきました。戦国期の創建から江戸時代の藩庁、明治期の廃城、そして昭和期の再建に至る城の歩みを、ここで詳しく見ていきます。
築城と城主の変遷
郡上八幡城は永禄年間(16世紀後半)に遠藤盛数(もりかず)によって築かれました。初代築城以来、遠藤一族が城主を務めましたが、豊臣・徳川政権の時代には譜代大名や旗本が城主となり、城主交代を繰り返しています。元禄期には井上正任(まさとう)が5万石で入封し、その後金森頼時(よりとき)が城主となりましたが、1754年の郡上一揆の影響で金森氏は改易されました。これ以降、郡上八幡藩は尾張藩に編入され、江戸時代末期には尾張徳川家の飛び地領となっていました。
廃城から再建まで
明治維新後の廃藩置県により、郡上八幡城は1870年代に破却され、天守閣は消失しました。城山には石垣や堀といった遺構が残りましたが、本格的な建物は失われていました。ところが昭和に入ると地元有志が保存運動を開始し、1933年に木造で現天守閣が再建されました。以来80年以上にわたって現在の城郭が継続しており、郡上八幡城は「日本最古の木造再建城」として地元の誇りとなっています。
郡上八幡城の建築と特徴
現在の郡上八幡城天守は1933年再建の模擬天守ですが、歴史的な山城の特徴を色濃く残しています。木造の白亜の城郭建築と、石垣や土塁などの城郭遺構を合わせて見ていきましょう。
模擬天守の特徴
郡上八幡城天守は4層5階建ての木造構造で、白壁が青空に映えます。高さは約17mあり、内部は展示スペースとして利用されています。特に1階には刀剣や甲冑、郡上八幡城合戦図など歴史資料が豊富に並び、郡上八幡の歴史を学べます。天守内の木造階段は歩くたびに軋む音がするため、訪れる人に昔の趣を感じさせます。
石垣と城山公園
天守御殿を支える石垣は野面積みで築かれており、山頂付近の遺構として今も残っています。山麓に広がる城山公園(旧二の丸跡)には、天守から降りる石段や土塁跡を見ることができます。公園内には、かつて城主に仕えた山内一豊(やまうちかつとよ)と妻・千代の銅像や、清水が湧く「土霊水(どれいすい)」と呼ばれる井戸もあります。いずれも城の歴史と生活を偲ばせる見どころです。
重要文化財の保存
1933年の再建時には、当時の技法で太鼓櫓や高塀(高さ約4mの城門付属の長塀)も復元されました。昭和62年にはこれらが郡上八幡城跡として岐阜県史跡に指定され、天守や門扉などは郡上市の重要文化財に認定されています。以後も定期的な保存修理が行われ、再建当時の姿が大切に守られています。
郡上八幡城の見どころ: 絶景と文化体験
郡上八幡城は山頂にそびえ立つため、眺望の良さが大きな魅力です。また天守内で歴史に触れる体験や、季節ごとの城周辺の風景・イベントも見逃せません。ここでは、天守からの景色、城内展示、紅葉ライトアップ、雲海など城固有の見どころを紹介します。
天守から望む絶景
標高約353mの天守最上階からは、城下町を流れる吉田川や遠く飛騨山脈まで一望できます。晴れた日には白壁の天守と青空、眼下の新緑や秋の紅葉、冬の雪景色とのコントラストが見事で、多くの観光客が感動の眺めを楽しんでいます。
展示館と資料
天守1階の展示室には刀剣や甲冑、郡上八幡城合戦の絵図など多数の歴史資料が展示されています。とくに関ヶ原の戦い前哨戦となった城攻めを描いた合戦図は必見です。郡上八幡城にゆかりの品々とともに郡上の歴史を学べるほか、木造階段の音が往時の雰囲気を伝え、訪問者に歴史をリアルに感じさせてくれます。
四季折々の風景とイベント
郡上八幡城は桜や紅葉といった季節の演出も美しく、春は城山公園の桜、秋には約100本のもみじが天守を彩ります。特に11月には「郡上八幡城もみじまつり」として城と紅葉のライトアップが行われます。闇夜に浮かび上がる白亜の天守と赤い紅葉の幻想的な光景は「紅葉の名城」とも称され、来場者を魅了します。
雲海と撮影スポット
郡上八幡城周辺では早朝に雲海が発生することがあります。特に秋口の早朝、吉田川沿いから立ち上る靄が城下町を覆い、天守だけが雲海に浮かぶ幻想的な情景となります。国道256号線沿いには雲海の名スポットがあり、状況が整えば「城が雲に浮かんだ」ような写真を撮ることもでき、写真愛好家にも人気です。
郡上八幡城周辺の観光スポット
郡上八幡城を訪れたら、城自体だけでなく周辺の史跡や自然にも足を延ばしましょう。城山公園の桜や城下町の古い街並み、そして近隣の山城跡など、郡上八幡エリアには見どころが点在しています。ここでは城山の麓にある公園や城下町、近場の山散策などを紹介します。
城山公園と桜
八幡城の麓にある城山公園は桜の名所で、春になるとソメイヨシノ約300本が見事に咲き誇ります。無料駐車場も完備されており、ここから天守へは遊歩道で徒歩約10分です。公園内には滑り台やブランコなどの遊具もあり、花見をしながら家族でのんびり過ごせる憩いの場です。
城下町散策と名水
城山公園の麓から続く城下町には江戸時代の面影を残す古い町家が残ります。「郡上八幡」は水のまちとしても有名で、市内には「名水百選」の宗祇水(そうぎすい)や水路「いがわこみち」など清冽な湧き水スポットが点在します。城下町の街並みを歩きながら郷土料理や地酒を楽しめる飲食店も数多くあり、歴史散策の後に郷土グルメを味わうのもおすすめです。
山城と自然散策
郡上八幡城の周辺には麓から登れる山城跡もあります。市街地西側の尾崎山(おざきやま)には曲輪跡や石段が残っており、登山道をのぼると眼下に天守や町を望む絶景が開けます。さらに愛宕山(あたごやま)には中腹まで車でアクセスでき、愛宕神社付近の展望台からは城山の天守と郡上市街地を一望できます。周囲には春の山野草や野鳥観察スポットも多く、ハイキングと自然散策が楽しめます。
まとめ
郡上八幡城は長い歴史と豊かな自然に包まれた魅力的な観光地です。四層の木造天守閣は戦国時代から続く郡上の歴史を今に伝え、最上階からの眺望は訪れる人々を魅了します。さらに城下町や城山公園、周辺の名水・名所を巡れば、郡上八幡の文化と自然を存分に体験できます。春の桜や秋の紅葉、雲海など四季折々の景観も見逃せません。ぜひ郡上八幡城を訪れ、その歴史と見どころを心ゆくまで満喫してください。
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