郡上八幡城の人柱伝説の真相が今明らかに！【知られざる新情報】

郡上八幡城は岐阜県郡上市の山頂にそびえる城で、日本で最も古い木造再建城の一つです。この郡上八幡城には、築城時に城を守るために17歳の若い娘「およし」が生き埋めにされたという【人柱伝説】が伝わっています。現在でも毎年の郡上おどり「およし祭」で供養されるなど、郡上市民にとって重要な民話になっています。しかし、その伝説が史実なのか、どんな背景があるのかは謎のままです。本記事では郡上八幡城の人柱伝説について、伝承の概要や関連するお祭り・祀る場所、さらには歴史資料との照らし合わせによる真相に迫ります。最新情報を踏まえ、郡上八幡城の人柱伝説の全貌を徹底解説します。

郡上八幡城 人柱伝説とは？

「郡上八幡城　人柱」というキーワードで語られる人柱伝説は、郡上八幡城建設の頃に生き埋めにされたとされる若い女性の物語です。当時、山の頂上に城を造るのは非常に難工事で、石垣が崩れるなどのトラブルが続出しました。そこで「生贄となる人柱を立てなければ工事がうまくいかない」という発想が生まれ、城主・工事責任者たちはある村の美少女を人柱として差し出すよう命じたと伝えられています。郡上八幡城の場合、白羽の矢が当たったのは神路村（現在の郡上市大和町神路）の百姓・吉兵衛の娘、およし（数え年17歳）でした。

およしは儀式の準備を整え、旧暦8月末の丑三つ時（深夜）に吉田川の清流で身を清め、白無垢の振袖と帯を身にまとって城の下へと進んでいったと言われます。そしておよしは建設現場の石垣の基礎部分に埋められ、人柱として永遠の眠りについたというのが伝承の大筋です。以来、郡上八幡城は大きな災害なく城下町を守り続けたと語り継がれますが、この物語の真偽については憶測が飛び交っています。

人柱とは何か：城づくりにまつわる風習

そもそも「人柱（ひとばしら）」とは、古くは大規模な建築工事や橋梁工事、治水工事などで工事の安全や成功を祈願して人を生贄とする風習を指します。日本各地の城や神社、橋に人柱伝説が残っており、災厄や事故、石垣崩壊が絶えない時には「人柱を埋めると地盤が安定する」と信じられたそうです。郡上八幡城だけでなく、長浜城や大阪城築城の逸話にも同様の話が伝わっていることから、戦国・江戸時代の人々の考え方の一つと言えます。

とはいえ、実際に人柱として生贄が捧げられたかどうかは史料に残っていない場合がほとんどです。城郭研究の見地では「山城の難所で工事が多難だったことを、苦難を避けるため故事にたとえた後世の創作」と考えられています。しかし民間伝承としては深く根付いており、郡上八幡城の伝説も長年にわたり語り継がれてきました。

郡上八幡城の歴史背景

郡上八幡城が最初に築かれたのは永禄2年（1559年）、織田信長の家臣・遠藤盛数による砦造営に始まります。その後、慶長6年（1601年）に将軍・徳川家康の重臣である青山氏らによって大規模な修築が行われています。現在の天守は昭和8年（1933年）に復元されたものですが、本丸跡には当時の建物跡や石垣基礎が残されています。これら築城期の状況が、人柱伝説の舞台ともなったのでしょう。

城自体は標高約350mの山頂にありますが、その地形ゆえに石垣の崩落や崖崩れが工事を困難にした記録が残っています。伝説では、何度組み直しても石垣が傾き、ついに「人柱が必要」と判断された点が強調されます。このような地盤の難しさと、人柱伝説のセットは他城でも聞かれる伝承パターンです。

人柱伝説のあらすじ

郡上八幡城の人柱伝説「およし物語」では、およしは非常に美しい娘とされ、村の男衆も半ば憧れの目で見ていたと言われます。そんな彼女に白羽の矢が当てられたのは、「大木を運搬する際に不思議な力で手助けをした」という噂が上役に伝わり、神秘的な力を持つ娘だからこそ人柱に適任と考えられたからです。

およしの両親や村人は泣いて抗議しますが、幕命には逆らえません。およし本人は「城の安全と国民のため」と覚悟を決め、当日の夜、清流で身を清めると真っ白な振袖と帯をまとい、供養の香を焚かれながら石垣の下へ入っていきました。民話では「今もおよしの白装束姿が満天の星に浮かぶ」「村人がおよしの墓にお参りすると泣く声が聞こえる」といった細部まで伝えられています。

城づくりと人柱信仰

日本の城づくりには古来より数々の苦難が伴い、そのたびに人柱信仰の逸話が語られてきました。特に山や沼地に城を築く場合、土台の安定性を懸念して危険除けのため人柱が求められるという考え方がありました。郡上八幡城のような高地での築城では、石垣や曲輪（くるわ）造成の際に崩落事故の連続が起きやすく、これを「怨霊や地神の怒り」と見なすことがありました。

また、江戸時代以前の他の城でも似たような伝承が残っています。長浜城（滋賀県）には長浜城主・羽柴秀吉（初代城主前）を落とし穴に沈めたという人柱譚があり、大阪城には豊臣秀吉の側室淀殿を城造りの人柱にしたという民話が残っていました。こうした話から、郡上八幡城の人柱伝説も汎用的な物語フォーマットの一つと考えられます。

学術的には「人柱を捧げた史実は確認されていない」という見解が一般的です。城郭研究では、石垣崩落は工法や材料不足による施工問題、あるいは大雨など自然災害によるものとされ、人が生贄にされた証拠は発掘調査でも見つかっていません。つまり、失敗しないように故事を呼び掛ける習俗の一種と捉えられているのです。

城づくりの難所と人柱

郡上八幡城は山頂に建つため、城山頂上やその付近の斜面で石垣工事を行わなければなりませんでした。平地の城と違い、傾斜地に巨大石を積むには念入りな地盤改良が必要で、しばしば石垣底盤が沈下して崩れるトラブルが起こりました。伝説にもあるように、いくら補修しても再び石垣が崩れた時、人柱という発想が生まれたと考えられます。

同様に養老町の一向山城（岐阜県）でも、石垣崩壊が相次いだため生贄説が流れた記録があります。かつて名古屋城築城時には、堀や石垣工事で犠牲者が続出した（感染症や事故の説もあります）際に、豊臣秀吉自身が人柱説を否定する触れを出した事例も知られています。こうした背景から、郡上八幡城の伝説も城づくりの難航ぶりを強調する民間語りと見る向きが強いのです。

人柱信仰の意義

人柱信仰には「神意に背く者への警告」や「共同体の安全祈願」という意味合いがありました。人柱を立てるという考え方自体は極めて残酷ですが、民話の中では「身代わりとなることで国土を守った英雄譚」として美化される傾向があります。郡上八幡城でも「およしはその後、城の守護神となり、村を災厄から救った」という話が伝承され、物語化の過程で語り手によって脚色されていったのでしょう。

郡上八幡城に伝わるおよし物語

郡上八幡城の人柱伝説の主人公である「およし」は、物語の中で17歳という若さとその美貌が強調されます。伝承によれば、およしは日頃から神懸かり的に力が強く、大木を引き運ぶ力があったと言われます。そのため、領主や棟梁の目に留まり「特別な娘」と評され、幕府役人に「生き埋めにして城を守るに相応しい」とみなされたのです。

生い立ちについては詳しい史料はありませんが、村の百姓吉兵衛の娘とされ、およし自身も最初は断固拒んだと伝わります。しかし「国のため、家族のため」と最終的には腹を括り、昭和期に復元された郡上八幡城の石垣の一角にある「およし塚」のあたりで生贄の儀式が執り行われたと語り継がれます。その時、およしは徹夜で白装束に身を包み、吉田川の水で身を清め、お香を焚かれる中で黙って石垣の下に入っていったといいます。

伝承ではおよしは泣きながらでも動じることなく、父母に別れを告げる時も殿（城主）や家臣らの前で毅然とした態度を崩さなかったとされます。また最後に「自分を食べて力の源としろ」と言い残したとも伝えられ、非常に尊い生贄として扱われました。物語は非常に悲痛ながらも劇的で、郡上八幡城の物語として地元で演じられたり、書き起こされたりして古くから人々に親しまれてきました。

およしを選んだ理由

なぜ数々の娘の中からおよしが選ばれたのかも伝説の見せ場です。前述の大木を引いた逸話に加え、「魔除けの呪術的要素」「末子説」「血のつながりのない者」という言い伝えも存在します。特に「白いきじを撃たなかった」という古歌の一節も、郡上おどりの民謡に取り入れられ、およしの人柱伝説が歌詞に組み込まれています（※）。

※郡上おどりの「宗祇水の唄」などに、およし伝説のエピソードが散りばめられています。

およしを祀るおよし社と観音堂

およしの遺徳をしのぶ祈念の場所は町内にいくつかあります。まず郡上八幡城の天守前「桜ノ丸」には悟竹院の奥の院にあたる小社が建立されており、「およし社」と呼ばれています。このおよし社では、人柱となったおよしを城下の災厄から守る守護神として祭礼が行われています。天守から近くアクセスしやすい場所なので、城見学の折に立ち寄る参拝者も多いです。

また城から下った麓、遍照堂の境内に建つ善光寺には「およし観音堂」があります。ここには木造のおよし像と石造りの観音像が祀られており、毎年8月3日の「およし祭」ではこの堂前で法要が営まれます。地元では「水場の女神」として信仰され、お祭りの縁日舞踊の際には花御堂に収められたおよし像に多くの観光客が献花を行います。

このように、郡上八幡城周辺にはおよしゆかりの祀り場が多数点在します。城下町案内板やガイドツアーでも紹介されており、およし伝説巡りを楽しむ観光客が増えています。

郡上おどり およし祭と伝説

郡上八幡の夏の風物詩である郡上おどりでは、8月3日の夜に「およし祭」という特別な縁日踊りが行われます。この日は城下町全体でおよしの故事を偲び、観光客も「およしの化粧」をして踊りに参加する風習があります。城前広場にはおよし像が飾られ、およしに感謝する踊り子たちで賑わいます。

およし祭の踊りには、祭囃子（まつりばやし）や歌詞の中に伝説の内容が取り入れられています。たとえば「我れ君を護らん八幡の土手で　涙で描く花と鳥」は、およしの健気さをたたえる歌詞です。踊りの合間には城主や僧侶による読経があり、夏の夜を舞台に古式ゆかしい供養行事が執り行われます。

このように郡上おどりとおよし祭は人柱伝説と密接に結び付き、郡上市民にとっては一夜限りではない恒例行事となっています。郡上八幡城は夜間特別開城され、祭礼に訪れた踊り手が城に足を運びお参りする機会も設けられるなど、人柱伝説への敬意が形として残っています。

郡上八幡城 人柱伝説の真相：歴史資料からの検証

郡上八幡城の人柱伝説は民話として現在まで語り継がれていますが、史実かどうかは別問題です。城郭研究や地元の史料を調べても、およしという実在の人物に関する公式記録は見当たりません。江戸時代の郡上藩政期の古文書や過去帳にも、人柱にされた女性の記述はなく、当時の行政文書にも「人柱」という言葉は登場しないのです。

郡上市は中世から近世にかけて文書を他地域に比べて残しにくい環境でもあり、伝承の源泉が民話レベルに留まっている可能性があります。郡上八幡城公式サイトにも「人柱伝説は史実ではなく民話である」と明記されており（公式歴史案内）、伝説の扱いは「郷土の語り草」として科学的検証の対象外とされています。

一方、近年の考古学的調査で郡上八幡城の石垣基礎周辺が発掘されても、人骨や人型の遺物は発見されていません。もし17世紀に人柱が埋められていた場合、何かしらの痕跡が出てくる可能性があるため、研究者の多くは「伝説は創作である」と結論づけています。郡上史学や民俗学の文献でも、およし物語は「地元民が城の由緒に彩りを加えたロマン」として紹介されることが一般的です。

史料に見られる言及

明治以降に編纂された郡上市史や城郭ガイドには、およし伝説を紹介する記述がありますが、それらはどれも「伝説」「民話」として扱われ、史実と区別しています。例えば昭和期の歴史家は「郡上の城といえば人柱譚はつきものである」と評し、由来を語る一方で「実際に行われた証拠はない」と否定的です。

また文化財史料として保管される城主家の公文書（古文書）にも、およし個人の名は記録されていません。唯一、城下善光寺の古い縁日記録に「8月3日に郡上踊延命院縁日」とあるくらいで、およしに関する注記は存在しません。これらから専門家は「郡上八幡城のおよし伝説は城を守るための象徴的な物語であり、資料上の裏付けは皆無に近い」と結論づけています。

まとめ

郡上八幡城の人柱伝説「およし物語」は、郡上市民の郷土意識を強める大切な民話です。山城の難工事を物語る象徴として、人柱の悲劇が後世に語り継がれてきました。およし祭や城内外のおよし社など祭事が続くことで、真相がどうあれ伝説は人々に大切にされています。一方で、城歴史の専門家や公式資料は「事実ではない民間伝承」として扱っており、現在では学術的な裏付けは見つかっていません。

城でおよし伝説を楽しむ際は、「ロマンあふれる伝承」として歴史と伝説の線引きを意識するのがおすすめです。郡上八幡城を訪れた際は、およし像や碑、およし社で献花したり、その背景にある地域文化にも目を向けてみましょう。歴史の謎に思いを馳せつつ、地域に根付く物語を体感することで、一層深い見聞が得られるはずです。